クラスマッチも終わり、特に何もイベントが無く、蕗とも会えない日々が続いた。
蕗と会えない、なんて普通だったのに、実行委員の関係でよく会ってたから、寂しい気持ちになった。
ある日、放課後偶然蕗のクラスの傍を通りかかったら、聞き覚えのある蕗の声が聞こえてきて、
私の胸は高鳴った。
そっと、クラスに近づく。
「俺、忙しいんだ。」
蕗だ。
「・・・でも、居ないんでしょ、彼女。」
女の子の声も聞こえてくる。
・・・どんな関係なんだろう。この子と。
不安になる。
「居ないけど、今はちょっと誰とも付き合いたいって思わない。」
誰とも付き合いたいって思わないんだ。
そっか。
・・・なんか私、頬が自然と緩んでる気がする。
「どうして?」
「どうしても。」
「・・・なんか元気ないね。」
「・・・別にそんなことない。」
「じゃ、そういうことにしててもいいけど。じゃあいいよ、付き合わなくても。遊んでくれるだけでいいや。」
会話の続きが聞こえないから、どうしたんだろうとそっと教室を覗いてみたら・・・
女の子が屈んで・・・蕗とキス・・・してた。
呆然としたけど、その場に居ちゃいけない気がして、
というか、居たくなくて・・・
逃げるようにトイレに駆け込んだ。
トイレの個室で声を押し殺して泣く。
付き合わないって、言ったじゃん。
どうして、キスするの?
・・・蕗が誰かとキスしてるところ、見たくなかった。
すごい嫌だ。
さっきの光景忘れたいのに、忘れられない。
涙が止まらない。
苦しくて、呼吸するのが辛い。
ヤダよ。ヤダ。
蕗が女の子とキスするの、初めてじゃないってことも知ってる。
だって、今まで私が知ってるだけでも、数人と付き合っているんだから、その人達とキスしてないハズが無い。
でも、どうしても嫌でしょうがなかった。
あんなに泣いたのは、久しぶり。
しかもお風呂場じゃないところであんなに泣くなんて、中学の時以来。
私は大泣きに泣いて、目が腫れて、翌日学校に行く気にもなれずに、初めてサボりを経験した。
大して具合が悪くないのに、寝ているだけだったから、イロイロ考えてしまう。
昨日見た光景がまた蘇ってきて、苦しくなって・・・。
もう頭の中がぐちゃぐちゃ。
ぎゅって、胸を締め付けられる感覚。
嫌だ。
もうこんな気持ちになるの嫌だよ。
蕗・・・
蕗・・・
もう、誰かと付き合ったりしないでよ!
そんな風に言えたらいいのに。
蕗が好きで好きで仕方がない。
私を見て欲しい。
側にいて欲しいよ。
蕗。
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