竜兎と洸希と姫乃の三人が教室に入ると、ほとんどの生徒が席に着いているのが見えた。
「俺らやっぱり遅かったな。竜兎!明日は早く起きろよ!あとネクタイも自分でやれ!」
「えー?竜兎自分でネクタイ締めなかったの?」
「やり方わかんなくてさ。洸希教えてくれ。」
「やっぱお前変!!どっか打ったか?」
「そうかも。だから帰ったら教えてくれよ。」
「わかったわかった。帰ったらな。」
竜兎はふっと隣に立っている姫乃を見た。
(女はリボン付けるのか。ってことは璃麻はネクタイじゃなくてリボンなんだな。
璃麻の制服姿・・・。見たい。・・・・・・。
見るだけならいいだろな。話すのがいけなくても見るだけなら・・・。)
「さっきから何?何度も私のこと見てない?すごい気になる。」
「あ。悪い。ちょっと考え事してて・・・。それよりまだ授業は始まんないよな。」
「授業じゃなくて、ホームルームだろ?えっとーホームルームはあと5分で始まるな。でもなんでだ?」
「すぐ戻る。」
竜兎は二人にそう言うなりすぐに走り出した。
(B・・・っと。)
竜兎がB組のドアから顔を少し出し、璃麻の姿を探すと、璃麻は一人の女と二人の男と仲よさそうに話をしていた。
(なんか複雑な気分だな。璃麻が別人みたいだ。本当なら俺が璃麻の隣にいるのに。)
竜兎は少し寂しげな顔をした。そして、A組の教室に戻っていった。
「おかえりー!・・・竜兎?どうしたの?」
「別に・・・。」
「別にっていう顔してねえけどな。まぁ悩みがあるならお兄様であるこの俺に何でも言えよ。」
「兄弟ってそういうもんか?」
「当たり前だろ!何をいまさら・・・。」
「わかった。覚えとく。」
「変なやつ!」
洸希は笑って竜兎の頭をクシャっと撫でた。
+++
ホームステイのメンバー達が未来から来てから1週間が経とうとしていた。
(今日も竜兎と話せないなんて・・・見ているだけなんて辛いよ・・。)
璃麻は、ぼーっとしながら廊下を歩いていた。すると誰かにポンと頭を軽く叩かれた。
(えっ?竜兎っ!?)
璃麻が振り向くと、そこには友達の沢口祥司が立っていた。
(なんだ。祥司か・・・。竜兎な訳無いのに・・・。何期待してんだろ、私。)
「おいおい。その顔なんだよ?嬉しそうに振り向いたと思ったら急に不機嫌な顔しやがって!」
「そう?別に・・・。」
「いーや。別に、っていう顔してなかったぞ!」
璃麻は祥司の言葉を無視しながら、教室に入って行った。すると璃麻の友達の北野来夏が、話しかけてきた。
「璃麻、おはよー!」
「おはよう来夏。」
「あれ?なんか璃麻ってば今日元気ないんじゃない?」
「そう?」
「ちょっと聞いてくれよー来夏―!」
璃麻と来夏が話しているところに祥司が割り込んで入ってきた。
「何?何よ?」
「さっき璃麻が俺の顔見て急に不機嫌になったー!」
「あー・・・。まぁ、それはしょうがないんじゃない?」
「来夏まで・・・ひでえよ!」
「うそうそ。冗談!」
「なぁ、璃麻。」
「ん?」
「さっき俺を一瞬誰かと勘違いしてたんじゃねえのか?」
「えっ?」
(祥司ってば、鋭い!でも竜兎のことは言えないし・・・。)
「・・・っ・・違うよ!」
「嘘だな。ほんとは好きな奴のことでも考えてたんじゃねえ?」
(なんで??なんでわかるの?)
「うそー!璃麻って好きな人いたんだ!このクラスの男?」
「ち・・・ちょっと待って。どうしてそんな話になるのよ!?」
「その相手はズバリ・・・。」
(えっ?私が竜兎のこと好きってバレてた?)
「・・・貴弘だろ?」
「は?」
余りにも予想外の答えで唖然となる。
「だーかーら!貴弘!元町貴弘!」
「・・・な、なんで貴弘なの!?あービックリした。」
「あれ?違うのか?」
「違うよ。」
「ちぇっ。当てが外れたな。」
「こんなことだろうと思った。祥司の予想は当たったためしがないもんね・・・。」
「そういえば貴弘は?いつもならこの時間には教室にいるのにね。」
「ほら!貴弘のこと気にしてる。貴弘のこと好きなんだろ?」
「違うってば。」
「じゃあ誰が好きなんだよ?言ってみろよー!」
「私のこと大切にしてくれて・・・頼りになる・・・。」
危うく竜兎のことを言いそうになり、口を手で覆う。
「もうこの話はおしまいっ!」
「ちょっと待って!本当にそんな人がいるの?それって璃麻の理想のタイプの人ってこと?」
「ノーコメントです。」
璃麻はそう言って竜兎のことを隠し通した。
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