豪華なお昼ご飯を食べさせてもらってから、

場所を葉の部屋に移動して、二人並んでベッドに寄りかかりながら、

二人でゆっくり話をした。

葉は私の手を握ってきて、一瞬ビクリとしたけれど、

嫌な感じはしなくて、

寧ろその手を放したくなくて、私も葉の手を握り返した。

本当はもう、余計なことを葉に言うつもりはなかったけれど、

いつのまにか、葉に誘導されて、

ちょっとづつ、自分のこと、今までのことを話していた。

言ってから、何度も、何度も、葉の反応が気になって、恐くて、

私はおかしいかも、嫌われるかもって思って、不安になったけど、

葉と繋いでいた手は、私の言葉で一度も緩む事は無くて、

寧ろ何回か、ぎゅっって強く握られたことで、

大丈夫だ、って言ってもらえてる気がして、なんだか安心した。

葉は言った。

「俺は、由良が何でも話してくれたら、嬉しいよ。

泣いたり、怒ったりするのだって見たいし。」

「え?どうして?」

泣いたり、怒ったりって・・・なんでそんなの見たいの?

普通そういうの見るのって嫌がるよね?迷惑でしょ?

お母さんは私によく言っていた。

そういう態度、イライラするからやめて、と。

そう思うのが普通なんじゃないの・・・?

「・・・どうしてって。ホラ・・・今日、初めて俺の前で泣いたじゃん?

ビックリしたけど、俺に気を許してくれてるみたいで嬉しかったんだよ。

色んな感情を素直に出してくれると、

それだけ近くに感じるっていうか・・・。

由良って、無意識かもしれないけど、他人と距離を取ろうとしてるだろ?

俺にだって、一番近くにいるはずなのに、一線引かれてるようなとこあるし。

でも、俺、あんまりそういうこと、されたくない。

・・・違うな。そう思ってンの俺だけじゃないと思う。

誰だって、わざと距離を取られるなんて嫌に決まってる。

クラスのヤツだって、同じだと思うけど。

由良が近づかないでっていうオーラ出してるから、皆が近寄れないだけで、

ホントはもっと仲良くなりたいとか思ってんじゃないの?」

私は直ぐに首を振った。

「絶対そんなことない。どうせ皆、私のこと嫌だって思ってるんだから。」

「そうなの?なんか、嫌われるようなことしたわけ?」

「・・・してるつもりは無かったけど・・・皆、そう思ってるって・・・。」

お母さんが・・・言ってた・・・。

「なんだソレ。つーか、そもそも皆ってダレ?有り得ないね。

誰がそう言ったのかは知らないけど、そんなわけないだろ。」

葉は呆れるようにそう言った。

そして。

「俺は由良が人に嫌われるタイプには思えない。

一方的に壁を作らなければ、自然と友達だって増えるんじゃない?」

葉の言葉を聞いて私は俯く。

「・・・別に友達なんか要らない。欲しくナイ。」

小さく呟いたその言葉を葉はちゃんと聞いていて、

不思議そうな声を返してきた。

「なんで?」

私は俯いたまま言う。

「・・・友達って言っても、嫌なこと言われたり、

裏切られたり、争ったり・・・そういうことするでしょ。それが嫌なの。」

「そういうのされたんだ?」

「・・・。」

肯定の言葉は言いたくなかった。

でも、黙っているのは、認めているようなもの。

どうしようかと思っていたら、葉は、私の手を強く握りしめ、

沈黙を破った。

「そっか。

・・・キッツイな。そんな風に思っちゃうくらい嫌なことあったんだ。

でも、だからって『友達なんてイラナイ』っていうのは、もったいないし、間違ってると思うんだけど。

俺は、友達と居ると楽しいよ。

独りで出来ないことでも友達とだったら出来ることだってあるし、

困った時に助けてくれたりするし。」

「でも・・・。」

「由良は今までいい友達に会えなかっただけ。

きっと、これからはいっぱいいい友達と会えるよ。」

葉はそう言って、私の頭をぽんと叩いた。

顔を上げて、葉を見ると、

葉は私の頬をちょんとつついた。

「笑えって。何でそんなに不安そうな顔してんの?

大丈夫だって。これから、嫌な思いしたり、疲れたら俺の所にくればいい。

俺が嫌なこと忘れさせてやるし、甘えさせてやる。

俺にはワガママだって言っていいし、頼りたいと思ったら頼っていいよ。」

葉はそう言って、私に笑顔を見せてくれた。

それを見て、私はまた涙が出そうになった。

ほら・・そうやってまた葉は私を喜ばせる言葉をくれる。

・・・どうしてこんなダメな私に、優しくしてくれるの?

私と一緒に居ても、葉にメリットなんて何も無いのに。

こんな私とでも、葉はこれからもずっと一緒に居てくれるのかな。

離れたく・・・ないよ。

「葉・・・好きだよ。」

私が葉の顔を見て真剣にそう言うと、

葉は一瞬、驚いたようだったけれど、

すぐにふっと笑みを漏らして、言った。

「知ってる。」、と。





  


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