train





遠くで電車のアナウンスが聞こえる。

ぱちっ。

目が覚めた。

ここどこ?キョロキョロ周りを見渡す。

車窓から見えた景色は、見慣れないところだった。

あー、乗り越しちゃったか・・・。

時計を見ると、10時30分・・・。

完全に遅刻だわ。

駄目だ・・・。電車ってホントに眠くなっちゃう。

眠い・・・。

どうして電車って眠くなるんだろ?

あーあ。次の駅あたりで降りて、反対方向の電車に乗るかな。

ん・・・。でもめんどくさいや。
この電車ってずーっと回ってる電車だし、どうせ遅刻ならもう一周電車の旅、しちゃおっと。

ふと、反対側の座席を見ると、高校生ぐらいの男の子が座っていた。

茶髪でピアス。

ポケットに手を突っ込んで電車の中吊り広告見てる。

変な子。

学校はどうしたのよ、少年。

自分だって、人のことは言えないけど。。

ま、いいか。ほっとこ。

それにしても、眠い。

眠い・・・。

ネムイ・・・。

ね・・む・・ぃ・・・。

そう思うと、再び眠りに落ちてしまった。



ハッと気がついて、目を覚ますと、また降りなくてはいけない駅を過ぎていた。

ヤバイ。マジでヤバイ。

2周もしちゃったの??

時計を見る気も失せる。

もう学校行くの止めようかな。

そう思い、ふと反対側の座席を見ると、さっき見た、茶髪でピアスの男の子が、まだ同じ席に座ってた。

「はぁッ?」

コイツ、ずっとこの電車乗ってんの?

なんで?

不思議そうにそいつをじっと見つめていたせいか、少年は私に話しかけてきた。

「何?」

「別に・・・。」

「別にって顔してないだろ。」

「・・・・・・。」

ばれてた?シラを突き通せるとは思えず、正直に聞いてみることにした。

「・・・いつまでこの電車に乗ってるつもり?」

「アンタこそ、いつまでそこに寝てるつもり?」

「・・・うっさいわね。アンタに言われたくない。変な少年ッ!!」

「・・・少年じゃない。悠、だ。芥川悠。アンタは?」

「アンタじゃない。あたしは、城山蒼歌。

・・・で、悠は何でずっとこの電車に乗ってるの?

学校はどうしたのよ。学校は。」

「登校拒否。」

「ふーん。拒否って電車に乗って時間潰してたんだ?

もったいないなぁ。もっと時間は有効に使わなきゃ。」

「使ってるさ。今は、電車の広告料について考えてた。

知ってるか?電車の中吊り広告って、JRより、地下鉄の方が広告料高いんだぜ。」

「なんでよ?」

「地下鉄は、景色がない分、乗客の目は必然的に電車内に向くだろ?だからだよ。

ちなみに、地下鉄の中でも、電車によって、広告料が違ったりもする。」

「へぇ・・・。って・・・そんなこと知ってて意味あんの?」

「知っておいて損はない。」

「・・・それはそうだけど。・・・アンタって変なヤツ。」

「お互い様。」

「はぁ?なんでアタシが変なヤツなわけ?」

「この電車、意味も無く2周もしてるだろ。景色とか見るわけでもなく、ずっと寝てて・・・。」

「眠いから寝てただけ。電車は眠くなっちゃうんだもん、しょうがない。

ねぇ、悠はいつもこんな事してるの?」

「否、今日は特別。図書館行ったら、休館だったんだ。」

「・・・休館とかって、事前に調べといたらどう?」

「・・・普段は休日しか利用してなかったから、自分には休館情報なんて縁が無いと思って、特に気にしてなかった。」

「ふーん、ってことは、拒否って間もないってことかしら。」

「そゆこと。

俺の拒否った理由、知りたい?」

「別に。興味ないし。あたしさ、拒否りたい人は勝手に拒否ればっていう考えのヒトだから。」

「あっそ、それは良かった。」

「あー、眠い・・・。悠はあと何周して帰るの?」

「・・・別に。決めてない。でも、もう降りる。」

「そっか。」

特に意識していないのに、なんだか、沈んだような声が出た。

自分でもびっくり。

「残念?」

悠は、ニヤリと笑みを浮かべてこっちを見てくる。

「ち、違うわよっ。」

「ふーん?ま、そういうことにしておいてもいいけど。」

「ホントに、なんでもないから!!」

「そんな、思いっきり否定しなくても、いいんじゃないですか?」

「・・・そうデスネ。」

なんか恥ずかしくて、顔が熱くなってきた。

別に、惚れたとか、そういうんじゃないんだけど。。。

やばい、あたし、おかしい。

「じゃあね、あたし、次の駅で降りる。」

とっさに、こんな言葉が出た。

「連絡先とかって教えてくれるのが普通だと思うけど?」

悠は、じっと、こっちを見つめて言ってくる。

私は、慌てて目線を逸らす。

「・・・・・・教えても良いけど・・簡単に教えるのってつまんないじゃない。」

「つまんないって・・・。」

とっさに、名案が浮かんだ。

あたしってすごいかも!!

「次に、会った時に教える。あたし、きっとまたココで電車の旅、してるから・・・ね?」

その方が、きっと面白い。

「次に会うときまで、おあずけってヤツかよ。」

「そゆこと。」

あたしがニコニコ言っているのに対し、悠は、拗ねたような顔をした。

可愛い。

思わずそう思った。



もうすぐ、降りる駅が近づく。

悠とお別れだ。

やっぱり番号、教えようかな。

次に会えるのがスグだっていう保証はない。

チャンスは今しかない。

そう思って声を掛けようとしたら、逆に掛けられた。

「When the train had been taken first, it fell in love at a glance.」

え?え・・・英語!?

ってゆーか、発音キレイ・・・。

そうじゃなくて・・・。今、なんて言いました?

英語嫌いのアタシには、早くて聞き取れないよ。

そんなアタシの心中を知らず、悠は、構わずに私の眼をまっすぐ見つめ、続けて何かを言ってくる。

瞳が・・・キレイ。

って、今、そんなことを思ってる場合じゃなくて・・・。

もう一度聞かなきゃ。

「もう一度、もう一度言って。」

悠は、ため息を軽くひとつ付いて言った。

「When the train had been taken first, it fell in love at a glance. Don’t say again.」

fell in love・・・?こ・・・恋に落ちた??

「You were sleeping with opening your mouth. The sleeping face was cute.」

悠は、笑いながら言ってくる。

なんて言ってるの?

気になる。

なんで笑ってるの?

気になる。





降りる駅に着いた。









けど・・・。









私は降りなかった。





発車のベルが鳴り、ドアが閉まる。

そして、電車が走り出す。





悠はこっちを向いて、にっこり笑った。

「3周目に突入。」

「・・・何て言ったの?ねぇ、さっき何て言ったの?」

「降りなくて良かったのか?」

「・・・あのままじゃ、気になって、夜も眠れないわ。」

「・・・だろうね。」

「もしかして・・・図ったの?」

「Of course.」

「オフコースってあんたね・・・。」

「絶対、俺が何言ってるのか、気になって降りないと思った。」

「ムカつく。で、なんて言ってたワケ?」

「英語苦手?」

「・・・苦手っていうか、キライ?」

「・・・さっき、“もう言わない”って英語で言ったけど。」

「それは解った。けど・・・大事なトコは解らなかったの!!お願い。もう一回言って。

悠って英語早すぎっ!!」

「・・・はいはい、ゆっくり・・な。」

二度目は、とてもゆっくりと言ってくれて、私にも、充分聞き取りが出来た。

そして、恥ずかしくなった。

「・・・見てたの?あたしの寝顔を。

しかも、口を空けてたって・・・。」

もう恥ずかしい・・・。穴があったら入りたいって、こういうことを言うんだわ。

「言っただろ?The sleeping face was cuteって。寝顔、なかなか可愛かったぜ。」

悠は、また笑いながら言った。

もうヤダ。

「さてと、番号、教えてくれよ。蒼歌って結構面白いんだな。気に入った。」

「気に入ったって・・・。」

「また一緒に電車の旅しようぜ。」

「・・・・・・いいけど・・。」

「けど?」

「・・・この電車の旅は飽きた。今度は、江ノ電あたりの電車の旅をしよ?」

「了解。」



END





英語の訳を一応載せておきます。

『最初に電車に乗ってきた時、一目で好きになった。』
『最初に電車に乗ってきた時、一目で好きになった。もう言わない。』
『口を空けながら寝てたよ。寝顔、可愛かった。』

ま、こんなかんじですかね?英語苦手なので、本当に合ってるのかは、不明。


これね、TAEさまに捧げた品でした。

リクの内容は、TAEのオリジナル小説の『GLADIUS』に出てくる『芥川悠』を登場させた小説、だったんだけど・・・。
ここに出てくる悠って、本物の悠と全然違うの・・・。おもいっきし、ニセモノ。
はぁ・・・。なんか、同姓同名の人が登場したってカンジだなぁ・・オイ。
あたしの中の悠は、とにかくカッコよくて、頭の回転がすごく速いヒトなんだけど、それを上手く伝えられなかったのが、残念。


それにしても、電車って眠くなるよね・・・。
山手線3周は、しませんけど。。。・・・1周だったら、してもいい・・・かな?・・・人間ウォッチング好きだし・・・。

電車は、小説のネタ考えるのに、もってこいの場所。結構、電車の中で思いつくのが多いかも。






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