「あ、影志!」
「あ゛?」
蕗は、登校し、教室で影志の姿を見つけると、すぐに声を掛けてきた。
影志の機嫌が悪いということが少し気になったが、構わず話を続ける。
「昨日便所行くって言ってなんでずっと戻ってこなかったんだよ?」
「あー、そういえば。ワリィ、色々あって・・・。」
「色々?」
「あぁ・・・。」
曖昧に対応していると、そこに舞が来た。
「えーしィ。あたし知ってんだ〜!影志さ、昨日・・・。」
「何を知ってるんだよ?(・・・藍莉と付き合い始めたことか?それを知られると、かなりヤバイんですけど。)」
影志は内心漠々しながら平静を装って尋ねる。
「昨日、E組の天草サン・・。」
「(やっぱり藍莉のことか・・・。)」
「・・を運んだんでしょ?」
「へ?」
「だから、E組の天草さんを保健室に運んだんらしいじゃん?優しい〜☆」
「えっと・・・。ま、まぁな。」
よ・・よかった・・・、影志は心からそう思い、笑顔になった。
「あ、なんか笑ってるし。さっきまで機嫌悪かったのにな。」
「機嫌が悪かったの?」
「・・・別に。」
そう・・影志の機嫌は悪かった。
原因はもちろん、藍莉だ。
今朝、朝食が済んだ後、すぐに藍莉は影志に冷たく言い放った。
「はい、早く学校行って。」
「・・・何でだよ。一緒に行けばいいだろ?しかもまだ時間に余裕あんじゃん?」
「・・・条件忘れたとは言わせないわよ?付き合いを隠すんだから、一緒に登下校なんて却下。」
「・・・バレねぇって。」
「短い間でしたが・・・。」
「ち・ちょっとマテ。分かった。一人で行く。でもよ、だったらいつ二人っきりで過ごすんだよ?」
「・・・休日。」
「・・・ヤダ。」
「ヤダじゃない。」
「昼飯、一緒に食おうぜ。」
「お昼は、山科サンと湯口さんと一緒と決まっているのです。」
「・・・山科、湯口だとぉ!?」
影志は、あの眼鏡の奴らか・・・、とブツブツ言い、頭の中に昨日会った二人を思い浮かべた。
「そう。だって、一緒に食べないと色々あんのよ。」
「・・・ムカ。」
「ムカってあんたね・・・。ホラ、先に行って。」
藍莉はそう言うと、半ば無理やりに影志を押し出した。
それがどうも納得出来ず、今まで機嫌が悪かったのだ。
「えーし、いい匂いする。」
「あ?」
舞の突然発した言葉に影志は首を傾げた。今日、香水は付けてないはずだが・・・。
「この匂い・・・Envyでしょ?うん、間違いない!」
「Envy?・・・そんな名前のヤツ、付けた覚えはない。」
「えー?絶対GUCCIのEnvyだと思ったんだけど。あ、あれって女ものか。」
女もの・・・。もしかして、藍莉の匂いが移ったかな。
黙り込んだ影志を見て、蕗はガシっと影志の肩を掴み、言った。
「・・・さては影志、昨日女と居たな。今度の相手は誰?」
「あたしもそれ聞きたい〜。あたしの予想は、香水から想像して、きっと年上の女ね。」
蕗と舞は、二人して身を乗り出して影志に詰め寄ってくる。
「年上・・・というと、大学生?俺にも紹介して。」
「マテ、マテ、お前等。頼む、聞くなっ!」
「・・・聞くな・・というとますます聞きたくなるだろ。」
「・・・もしかして・・不倫・・・とか?相手・・・人妻?」
「・・・勘弁してくれ。」
影志は、ぐったりして机に突っ伏した。
その時、タイミング良く教師が教壇に現れ、二人は諦めて席に戻って行った。
「(ヤバイ。ヤバイ。絶対にヤバイ。この調子だとすぐに藍莉と別れなきゃいけなくなる。
それは嫌だ。
絶対に藍莉と別れたくない。
ったく・・・前の俺だったら、『去るもの追わず』だったから、こんなに藍莉に必死にならなかったのに。
いつからこんな風になったんだか・・・。)
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||