付き合い始めたその日の帰り道、本城君に色々聞いてみた。

「どうして、今日の朝、キスしたこと謝ってきたの?」

「・・・彼氏居るなんて知らなかったから、ワルイコトしたなって思って。

また俺の勝手な思い込みだったみたいだけど・・・。」

「どうして、キスしてきたの??」

沈黙。

なんでそこで黙るの??

不思議に思っていると、少しの沈黙の後、ぽつりと小さく呟いた。

「・・・両想いだって、分かって、嬉しくて・・。」

顔が真っ赤。

この人は・・・すぐに顔が赤くなる人なのね。

「私、すっごい悩んだんだよ。なんでキスしてきたんだろうって。」

「ご・・ごめん。でもさ、俺が、傘貸した相手って、考えは全く無かったわけ?」

うっ・・・それ言われるの、やだなー・・・。

「な・・・なかったです。だって、カンジが全然違うんだもん。言ってくれればよかったのに。傘、返してくれない?って。」

「・・・言えるわけないだろ。恥ずかしい。俺、振られてんだぞ?」

「振ってないんですけど・・・。」

「・・・・・・。」

「声掛けて欲しかったな・・・。隣の席になった時、言って欲しかったよ。

そういえば、席替えの日、最初、ペコっと頭だけ下げただけで、違う方を向いちゃってさ・・・すっごい悲しかった。」

「あれは・・・恥ずかしかったんだよ。嬉しいってのもあったけど・・・。」

「嬉しかったんだ?」

にこぉって微笑んで下から覗き込むと、顔をまた真っ赤に。

そして、もう・・・いいだろ、と言うと、すたすたと足早に歩いていってしまった。

ち、ちょっと待ってよ。

慌てて追いつこうとしたらこけ・・・そうになった。

多分、あのままだったら、こけていたと思う。

こける・・・と思ったときに、本城君が支えてくれたから、転ばないで済んだ。

「どじ。」

そう言って笑うと、手を取り、繋いでくれた。

ふふっ。なんか嬉しいような、恥ずかしいような、そんなキモチ。



家の前に来て、じゃあ、といわれた時、なんだか離れがたくて、慌てて引き止める言葉をかけた。

「あっ・・・えっと・・・。」

「何?」

「あ・・・あのねっ・・・えーっと・・・。」

ちゅっ。

思い切り背伸びして、本城君の頬にキスした。

ホントに軽くだけど。

すると、みるみるうちに本城君の顔が赤く・・・。

こっちまでつられて赤くなりそう・・・と思ったとき、どこからか声が・・。



「へぇ・・・さくらちゃん、やるじゃん。」



「!!」

ばっと勢いよく、声のする方を向くと、ポケットに手を突っ込んだままこっちをじーっと見ている人が居た。

葉・・・だ。

「葉!!」

「本城ってヤツと傘のヤツ、同一人物だったんだろ?」

「なんで知ってるの?」

「津本から聞いた。どうも初めまして、本城サン。」

葉がニコっと笑って、ペコりと頭を下げると本城君も頭を下げる。

「ど・・・どうも。」

「あ、さくらちゃん、借りた傘、返したの?」

「あ!返してないッ!!本城君、ちょっと待っててっ!!すぐ持ってくるから!!」

私が慌てて玄関を開け、走って傘を取りに行こうとすると、後ろから、いいよという声が聞こえる。

でも、構わず私は傘を取りに走った。



+++



傘を取って、戻ってくると、ちょうど葉とすれ違った。

ニヤニヤしてる。

何か本城君と話したのかな?

ま、いいか。

「はいっ。長々と借りちゃってごめんね。」

「あ・・・。いや、いいんだけど。」

ん?様子がなんかおかしい。

「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ。じゃあ、また明日。」

「う・・・うん。明日。」

本城君が見えなくなるまで見送ると、慌てて走って中に入り、リビングでくつろいでいた葉に掴みかかった。

「なに言ったの?」

「なにが?」

しらばっくれて平然とテレビを見ている葉の顎を掴み、無理やりこっちを向かせる。

「なんだよ!」

明らかに不機嫌な顔。

「さっき、本城君に何か言ったでしょ。何言ったの?」

「別に。何にも言ってないよ。」

テレビみたいんだけど、と私を横に押しやる。

ぷぅ・・・と頬を膨らませて、怒ったことを露わにすると、葉がため息を一つ吐く。

「知りたいの?」

「うん。」

「しょうがないな・・。

妹、可愛いですね、って言った。」

「・・・ホント?ホントにそれだけ?」

「うん。津本菜々って笑顔が可愛い。」

「もしかして、葉、菜々ちゃんを狙ってるの?」

「さてね。」

なんか、不安だよぅ・・・。

お願いだから、何事もトラブルが無く、これからシアワセな日々が後れますように。。。







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