月日は流れ、私は高校入学して2度目の春を迎えた。

新しいクラスの発表を見るため、いつもよりも少し早めに家を出て、学校に向かう。

学校に着くと、もう既に掲示板の前には人だかりが出来ていて、その前で一喜一憂している人達がいた。

皆、友達や好きな人と同じクラスになれた喜びとか、なれなかった悲しみとか、周りの人と共有していたけれど、私は別にそんなのなかった。

高校に入ってから友達になった山科さんとは、遊びに行くとかするほど、そんなに親しくなったわけでもなかったし、好きな人は・・・いなかったし。

・・・そう、好きな人はいなくなった。

いないと思い込むようにすることにした。

蕗のこと、好きって思っていても、どうしようもないから。

謝るタイミングを逃し続けた私は、もう蕗との関係を修正出来ないところまで来てしまっていて、相変わらず絶交状態が続いていたし、

蕗には、カノジョが絶えず居たみたいだったんだ・・・。



掲示板の前から人が一人、二人・・・と居なくなり、やっとクラス発表の名簿が見えるようになった。

A、B・・と見ていて、B組のところで一度視線が止まる。

『剣持 蕗』

蕗の名前があった。

B組・・・なんだ。

その後の名簿をずっと追ってみてはいたけれど、B組に私の名前は無かった。

なんでかな、ちょっとショックを受けてる自分が居た。

同じクラスになれば、話すことが出来るかもしれないなんて、淡い期待を持っていたからかもしれない。

「あー、Bになりたかったー!!」

私の気持ちを代弁するかのように、周りで女の子がB組が良かったと嘆く。

でも、それは一人だけじゃなかった。何人かの女の子が口々にB組が良かったと言うのだ。

私は不思議に思って、その子たちの話に耳を傾けてみた。すると、

「Bに佐渡君と剣持君が居るなんて羨ましすぎ。」

なんて言う。

相変わらずの蕗の人気に驚かされる。

それともう一人・・・私はあまり好きではない、蕗の友人である“サワタリエイシ”の人気にも。

確かにBのところに、『佐渡 影志』という名前もあった。

私は一度も蕗と同じクラスになったことが無いというのに、コイツは小学校から数えて何度も蕗と同じクラスになっている。

・・・すっごく悔しい。

かなり不機嫌になりつつも、私は自分のクラスを探す為、また名簿に目を向ける。

しかし、見ても見ても一向に名前が見つからない。

見落としているのかな、なんて不安になりつつも名簿の先を追っていき、やっとE組のところに自分の名前を見つけた。

私の前には山科さんの名前もあって、山科さんとまた同じクラスになったということもわかった。

Eか・・・

なんか、E組になったことがスゴク憂鬱で仕方がない。

だって、BとEって離れすぎてるんだもん。

・・・って、ちょっと待って。私、さっきからずっと蕗のこと考えてる。

蕗のこと、好きではないって思っていても、やっぱり存在は気になるんだ。

今までは隣のクラスだったから廊下で見ることも出来たのに、BとEじゃ校舎も違うから滅多に遇う事なんて無い。

・・・バチがあたったんだ。

『もう蕗と一緒にいるなんてイヤ』なんて言っちゃったから。

「あんなこと、言わなきゃよかった・・・。」

もう何度目かも分からない後悔を小さく呟いた。



何度掲示板を見てもクラスが替わるわけじゃないから、掲示板を離れ、新しいクラスに向かって重い足取りで歩いていた。

なんだか泣きそうになってる自分が居て、新しいクラスに行く前に一度顔を洗ってこようと思い、クルリと方向転換をし、水道に向かう。

すると曲がり角で人とぶつかった。

あんまり痛くは無かった。反対に、なんか、顔全体にやわからい感触が。

ちょっとよろけたけど、そのぶつかった相手が腕を掴んでくれたから転ばずに済んだ。

お礼を言おうと、その人を見上げると、言葉に詰まった。

だって、すごく綺麗な人だったんだもん。

同性だっていうのに、思わず見とれちゃうくらい素敵な人。

気品漂う顔立ち、背が高くて、足が長くて、腕も足も細くて・・・。

モデルさん・・・とか?

私は、雑誌とか読まないから知らないだけでもしかしたら有名な人なのかもしれない。

「大丈夫?ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて・・・。」

うわ、声まで素敵。

「あっ・・・私こそ・・・ごめんなさいっ!」

ペコリと頭を下げて、そそくさと水道に向かう。

あー、びっくりしたっ。

同じ年・・・ではないよね。3年生かな?

水道で顔を洗ったあと、ふと顔を上げて正面の鏡を見た。

すると、そこに映っていた自分の姿があまりにも冴えない顔で、悲しくなった。

なんて可愛くないんだろう。

なんてさっきの人と違いすぎているんだろう。

もし、あの人のように容姿端麗だったら、今とは全く違う、素敵な人生を送れたかもしれない。

羨ましい・・・な。

自分の顔が映っている鏡に水をバシャっとかけ、

はぁ・・・、とため息を大きくついて、水道の縁を掴んでしゃがみ込んだ。

何もかもがイヤになる。

何で私はこんな駄目な人間なんだろう。

あんな人だったら蕗も好きになるんだろうな。

あんな人になれたら・・・

どうしたらあんな人になれる?

知りたい。もっと。






  


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