エンキョリ。







ピーンポーン。

玄関のチャイムを押して、鍵が開くのを待つ。

この瞬間って、どの家に行くとしたって、ドキドキする。

居ないのかな?

物音もしないし、バイトとかに出かけてるのかもしれない。

あーあ、やっぱり電話とかしとけばよかった。

急に会いに行こうなんて考えるんじゃなかったかも。

もう一度、チャイムを鳴らしてもし、出てこなかったら東京見物に出かけよう。

そう決めて、もう一度チャイムを鳴らすと、しばらくしてガチャと鍵が開いた。

扉の向こうには愛しいあの人。ドアを開けて、私の顔見て、にっこり微笑んでくれるんだわ。

そう思ってニコニコしながら立ってたら、ドアが開いた後の、彼の反応は予想外のものだった。

目を見開いて、信じられないといったような顔つき。

あれ?にっこり微笑むんじゃないの??ま、いいか。

「来ちゃった。」

「・・・な・なんで?」

彼は未だに信じられないといった表情。あは☆面白い。

私はニッコリ微笑んで正直に理由を言った。

「会いたかったんだもん。それにね、朝起きて、占い見たら、今日はデート日和だったの。」

「・・・だからって簡単に来れる距離じゃないだろ。」

「ううん。簡単だったよ。新幹線ですーい、すい。」

「・・・まったく。」

彼は口ではそう言いつつも、嬉しそうな表情を見せてくれた。



私達は只今遠距離恋愛中。彼は大学生で東京在住、私は高校生で新潟在住。

毎日メールや電話したりしてるけど、やっぱりお互い、顔を見て話がしたかったんだ。



「中入る?」

「うん。お邪魔しまーす。」

靴を脱いで部屋に上がると、そこは、彼らしいシンプルな部屋だった。必要最低限のモノ以外は置かないといったようなカンジで、ベッドと机、オーディオセット、そして床に難しそうな教科書が積まれていた。

ベッドの布団が捲れているところを見ると、今、起きたばかりらしい。そういえば、彼の髪に寝癖がついてたような(笑)

「ココア飲む?」

彼がそう聞いてきたから、迷わずうん、と答えた。

わかった、と笑って彼はキッチンに消えていった。

床にペタンと座り、難しそうな教科書をぱらぱらと捲ってみた。うーん、やっぱり難しいわ。

ふとベッドサイドに目を向けると、そこには見覚えがある、私がプレゼントした写真たてが置いてあった。

おっ!と思って写真たてを覗くと、私と彼が私に向かってニッコリと微笑んでいた。

あたし、必要最低限のモノに入ってる?と思って、嬉しくなった。

しばらくして彼は熱々のココアをくれて、二人でそれを飲みながら会話をした。

久しぶりの二人っきりの会話。

会えなかった時間を埋めるように、いっぱい、いっぱい話をした。



いつの間にか時間は過ぎていって、とうとう最終の新幹線の時刻が迫ってくるようになった。

カエリタクナイ。そう思った。でも、そんなこと言ってられない。我慢しなきゃ。

遠距離恋愛になってから、我慢する事が多くなった。

何でもかんでも我慢、我慢、我慢・・・。

しょうがないって頭では分かっているけれど、心と身体はついていかない。

いつも、一人ぼっちの部屋で誰にも知られないように、毛布を被って泣くんだ。

辛くて、辛くて、もう耐えられないって思うけれど、やっぱり彼が好きだから頑張るしかない。



彼は駅のホームまで見送りに来てくれて、私はずっと笑っていた。彼に笑顔の私を覚えてて欲しくて、精一杯笑った。

泣くのは電車が動き始めてからでいい。今は笑っていよう。

「またね。」

そう言って、精一杯笑った。

イジワルなジリジリというドアが閉まる合図がして、私達の間には、厚い鉄の板が現れた。

電車がゆっくり動き出し、いつの間にか彼の姿が見えなくなった。

その瞬間、私の眼からは涙がぽろぽろ流れ始めた。

ハナレタクナイ。

涙は拭っても、拭っても止まってはくれなかった。

涙の所為で呼吸が乱れ、苦しかった。

その時、携帯が震えた。

ディスプレイを覗くと、彼の名前が。

通話ボタンを押して、携帯を耳に当てる。

「なっ・・に?」

涙声がバレないように必死に隠しながら声を出した。でも、彼にはバレてしまったらしい。

「泣いてただろ。」

「え?」

「今、泣いてただろ。」

「・・・泣いて・・ないよ?」

「うそだ。オマエはいつも別れ際、笑ってるけど、ホントは笑いたくて笑ってるわけじゃないよな。」

「・・・う。」

「もういいから、無理して笑わなくていい。」

「だって・・・。」

「大丈夫、オマエの笑顔ずっと覚えてるから。・・・それに。」

「それに?」

「・・・別れ際に笑顔で居られると、離れてるのが平気みたいに思えるだろ?それって結構いやだ。」

「・・・。」

「オマエ、ちゃんと勉強しろよ。それで、一年後、絶対に東京の大学合格しろ。」

「・・・うん、頑張る!」

いつの間にか、涙は止まっていた。



ガンバレ、自分。ガンバレ、私達。

来年の春には、二人で笑っていよう。

そして、ずーっと、側にいようね。



END








新幹線で隣に座った女の人が、電車が動き出してから急に泣き出したのを見て、勝手に解釈して書いた話。
これ、夜中にぱって短時間で書いたものだから、ちょっとおかしいトコあるかもしれないけど、ま、載せちゃいます。
多分、自己最短記録で書き上げたものだと思われる・・・。

でね、その私の隣に座った女の人、彼氏とホームで新幹線を待ってる間はずっと笑顔だったのに(ってか、彼と居る間はずっと)、電車が動き出してから泣き始めたんだよ。
あたし、びっくりした。
で、すぐに彼から電話掛かってきて話してた。
さっき別れたばっかだろ!って突っ込みたくなる感じだったけど、彼女は泣き笑いしてて、なんか乙女ぇーvって感じした。

エンキョリ恋愛がんばれ。






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