ぱちっ。

グレーフィンが目を覚ますと、そこは見慣れた風景、グレーフィンの部屋の天井だった。

(あれ?僕・・・洞窟に居たはずなのに・・・。もしかして・・・。)

「夢・・・だったのかなぁ・・・?」

心の中で呟いたつもりが、無意識のうちに声に出していたらしく、その声をきいて、グレーフィンの枕元に居た、エルが反応した。

「いいえ。現実の出来事でございます・・・。」

「うわっ!」

グレーフィンはエルに驚き、ベッドから飛び起きた。

「グレーフィンさま・・・。どうしてそんなに驚きになるのです?」

エルはグレーフィンの顔の前でパタパタと羽を羽ばたかせ、飛んでいた。

グレーフィンは髪を掻きあげ、ため息を一つつくと、ベッドの端に座り、エルの名を呼んだ。

「エル・・・。」

「はい?何でしょう?」

「・・・さっきのバラって・・・何?」

グレーフィンは珍しく怪訝そうな顔をして、エルに質問した。

「・・・あれは・・・力を使えるように封印を解いたのでございます。」

「封印を解いた?」

「はい・・・。ローザリィには力を持つものと、持たないものがおります。力を持つものは、生まれたときから力を持っているのですが、生後まもなく、その力を封印されるのです。」

「どうして?」

「幼いころに力を持っているというのは、何かと厄介でございまして・・・。つまり・・・子供は力をコントロールすることができませんので、力が暴走してしまうというわけで・・・はい・・・。手に負えないのです。」

「それで僕は、力を封印されてたってコトなんだ・・・。封印を解いた後、ものすごい吐き気がして、身体全体がだるくなったのは、なんでなんだろう・・・。今も、すこしだるいんだ・・・。」

「それは、グレーフィンさまの身体がまだ、力と適応出来ていないという事でしょう。・・・グレーフィンさまは、予想をはるかに超えた、強力な力をお持ちのようなので、身体と力のバランスがうまくとれないのだと思われます。」

「こんな様子で、明日ちゃんと出発できるかな・・・。」

「大丈夫だと思います。あと数時間も経てば、全身のだるさは嘘のように消え、逆にすっきりなさるでしょう。」

「そうだといいけど・・・。」

「さ、グレーフィンさま、もう少し、ベッドでお休みくださいませ。」

「うん・・・。」

そう言いつつも、グレーフィンは眠る事が出来なかった。

(なんか変な感じがするなぁ・・・。何か違和感がある・・・。何なんだろう・・・。)

「あ!!」

思い出したようにグレーフィンは大声を出した。

「チェリッシュ・・・。」

「チェリッシュが何か?」

グレーフィンの体調が良くないと、チェリッシュはいつも側に居て、グレーフィンを落ち着かせてくれるのに、今は何故か居ない・・・。どうして・・・。

「チェリッシュがいない・・・。」

「チェリッシュ。グレーフィンさまが呼んでいますよ。そこに隠れていないでこっちに・・・。」

「はいっ!」

「?」

(今、どこからか声が・・・。)

グレーフィンが周りをキョロキョロ見回していると、本の後ろから、エルと同じ大きさの小さな妖精が現れた。

その妖精は、柔らかいウエーブがかかった長い髪をしていて、頭の上に薄いピンクのリボンをしている。

グレーフィンはそのリボンに見覚えがあった。

「そのリボン・・・。僕がチェリッシュに結んであげたリボンだ・・・。まさか君が・・・チェリッシュ?」

「はい☆チェリッシュですぅ♪やっとお話ができるようになりましたね☆」

「え?チェリッシュって・・・。犬じゃ・・・?」

「妖精だったんですぅ☆今まで、犬の姿で生活してたんですぅ☆」

「え?どういうこと?」

エルがグレーフィンに説明をし始めた。

「チェリッシュは、グレーフィンさまの妖精でございまして、ローザリィからこの世界に一緒に来たのでございます。
しかし、妖精の姿で生活するのは、問題がありますので、犬の姿になって生活していたというわけなんです。」

「・・・チェリッシュ・・・。
そっか・・・チェリッシュは妖精だったんだ・・・。
チェリッシュ、今まで気づいてあげられなくてごめんね。犬としての生活、辛かったでしょ?」

「いいえ!グレーフィン・・・さま・・・がとても優しくしてくださいましたから!」

「チェリッシュ!僕、君と話が出来るようになって嬉しいよ。」

グレーフィンは本当に嬉しそうに微笑み、そっと、チェリッシュを抱きしめた。

チェリッシュは、恥ずかしそうに頬をばら色に染め、グレーフィンに抱かれていた。

「こほん・・・。あのぉ・・・。」

「なぁに、エル?」

グレーフィンはチェリッシュを抱きしめたまま、話し始めた。

「・・・私・・下に行ってお茶をいただいてきます・・・。ごゆっくり・・・。」

「うん、色々とありがとう・・・。」




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