Rosary
グレ-フィンは暗い、暗い場所に立っていた。
(ここは・・・どこ?)
辺りを見回してみても何も見えない。光はどこからも射して無かった。
「お願い・・・。青いバラを・・・早く・・・。」
どこからか誰かの声が・・・女の人・・・のような声が聞こえてきた。
「え?今、なんて?」
「グレーフィン・・・。お願い。青いバラを・・・。」
「青い・・・バラ?」
「お願い・・・。青いバラ一刻も早く・・・。」
「待って。どうして僕の名前を?君は・・・誰?」
「お願い・・・。あなたしかこの世界を救えないわ・・・。」
「どういうことなの?ねえ!!」
グレーフィンはベッドから転げ落ち、目が覚めた。
「夢?・・・かぁ・・・。変な夢。イテテっ・・・。」
落ちたときに打ち付けたところをさすりながらボーっとしていると、チェリッシュというグレーフィンによく懐いている犬がグレーフィンの顔にキスをしてきた。
「おはよう!チェリッシュ☆散歩に行きたいの?」
ワンと言えば1階に寝ている両親や妹、弟が起きてしまうというのが分かっているのか、チェリッシュはコクンと頷いた。
「よし、じゃあ行こうか。」
チェリッシュは、グレーフィンの良き相談相手であり、一番の理解者だった。チェリッシュは言葉を喋らないが、相槌を良く打ってくれ、グレーフィンが悲しい顔をしていると、慰めてくれるし、嬉しそうにしていると、一緒になって喜んでくれていた。
グレーフィンは立ち上がり、カーテンと窓を開けた。
「んぁっ!」
「?」
(今、どこからか変な声がしたような・・・?)
グレーフィンは辺りを見回した。しかし、部屋にシッポを元気よく振っているチェリッシュが居るだけで、他の誰かが居るわけではなかった。
(ここは2階なんだから、外に誰かがいるわけでもないし・・・。)
そう思い、窓を見た瞬間、窓枠に誰かの手が掛かっているのが見えた。
「うわっ!!」
グレーフィンは驚いてひっくり返りそうになった。
「グレイ!俺だよ、俺!!」
小さな声が聞こえた。
「え?ピィル?」
窓枠に、幼馴染のピィルがぶら下がっていたのだ。
「どうしたの?こんなに朝早く・・・。しかも、そんなところにぶら下がって・・・。落ちたらどうするの?危ないよ?」
「おもしろいもん・・・見つけた・・・。早く外に・・・出て・・・来いッ!・・・お・・・落ちるッ!!」
バタンと大きな音と共にピィルの姿が消えた。
「ピィル?」
ピィルはグレーフィンの家の2階の窓枠から落ちたのだった。
グレーフィンが外に出て行くとピィルが腰に手を当てて、顔を歪ませていた。
「イテテっ。」
「ピィル、大丈夫?」
「ヘーキ。それよりさ、ちょっと来いよ。お前にいいもん見せてやる。」
「何?」
「いいから黙ってついて来い!」
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