竜兎と璃麻が廊下を歩いていると、清掃の時間を知らせる音楽が流れ始めた。

その音楽を聞いたとたん、竜兎は、嫌そうな顔をした。

「・・・・・・清掃の時間か。面倒だな。」

「そんな顔しないの!これも勉強の一つよ。」

「勉強って言ったって、こう毎日やってれば、嫌になってくる。」

「あ、そういえば、こっちに来る前、忘れずにちゃんとマシンをセットしてきた?」

「あぁ。璃麻は?」

「・・・多分、大丈夫。」

「・・怪しいな。」

「・・・大丈夫・・・大丈夫。」

自分に言い聞かせるように、大丈夫、を繰り返している璃麻を見て、竜兎は、軽く溜め息をつき、ハイ、ハイと言いながら、璃麻の頭をポンポンと叩いた。



未来では、設定さえすれば、機械が勝手に部屋を綺麗にしてくれる。

未来の本来の竜兎の家には、今現在、誰も住んでいない。だが、埃というものは、自然と溜まってしまう。だから機械が定期的に埃などを綺麗にしてくれるように設定してきた。

帰ってきて、くつろぐ前に掃除をするなんて、ゴメンだ。



「じゃ、またね。」

「また、な。」

それぞれの教室の前で、二人は微笑みながら、そう言った。

明日も話が出来る・・・。その事実が嬉しかった。



璃麻が教室に入ったのを見届けると、竜兎は、自分の教室に入ろうとした。

・・・が、教室のドアの前に、洸希が仁王立ちしているのが見え、くるりと方向転換をした。

(ヤバイ。)

そう直感した。

・・・が、遅かった・・・。

勢い良く洸希に腕を掴まれ、教室の中に引きずりこまれた。

「い・・ってぇ。いてぇ!!いてぇよ、洸希!」

「うるせぇ。黙れ。」

「・・・放せっ!!」

「放したら、お前逃げるだろ?」

「・・・逃げねぇって!(・・・多分)」

「いーや、逃げるね。」

「ったく、何なんだよ!俺が何した?」

「今まで、どこ行ってたんだよ?」

「・・・保健室。」

「・・・そう思って、6限の前に保健室覗いたけど、お前、居なかったぞ?」

「・・・その時は・・トイレ、トイレ行ってたんだよっ!」

「・・・ふーん、じゃあ、来夏ちゃんだっけ?璃麻ちゃんの友達が、お前が廊下に居たって教えてくれたけど、あれは嘘だったのか?」

「・・・ら・来夏?誰だよ?」

「だから、璃麻ちゃんの友達。」

「璃麻の友達・・・?」

(あ、あいつか、廊下で璃麻と一緒に居たコ・・・。あのコが来夏・・・。)

「オイ、どうなんだよ?」

「あ?」

「オマエ、どこ行ってたんだよ?」

竜兎は、本来の落ち着きを取り戻し、しれっとした態度で対応する。

「保健室だぜ。(・・・ホントは社準だけど。)」

「・・・で、何してたんだよ?保健室で!!」

「何してたって・・・話。話合い。」

「どうせ、話だけじゃないだろ!」

「ホントに話してただけ。」

「二人で、授業サボって話合いかよ!」

「否、二人だけじゃなかった。」

(くくっ。さっきの、魁と奈津の会話みたいだ。・・・そういえば、あの二人、上手くいったかな?)

「このヤロ、俺がどんな思いして、先生達に言い訳してやったと思ってるんだ?」

「お疲れ。」

竜兎は、洸希の肩に手を当て、ニッと笑った。

それを見て、さらに洸希は逆上した。

「お疲れってなんだ、お疲れって!!」

「お疲れとは、労いのコトバだ。そんなことも知らないのか?」

「そういう意味でいってるんじゃ、ねぇー!」

「耳元で、そう叫ぶなよ。耳イテェ。」

そう言いながら、竜兎は、手で耳を押さえた。

「・・・まったく。」

「さてと、めんどくさい掃除ってヤツをやろうぜ?」

「・・・あのな。」

「洸希、机運ぶか?」

「はぁ・・・。あぁ、運ぶ。」

洸希は、竜兎の説明に釈然としない気持ちになりながらも、机を運び始めた。

竜兎が机を引きずりながら運んでいると、すかさず、注意の声が飛んでくる。

「竜兎くんっ!ちゃんと机を持ち上げて運んで!」

「ハイ、ハイ・・・っと。」

(あー、めんどくさい・・・。)





  


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