「じゃあな、璃麻。」
「う・・・ん。」
璃麻のクラスの前で二人が別れようとしたとき、璃麻は複雑そうな顔をした。
竜兎はそんな璃麻の表情を見て、心配になった。
「なんて顔してんだよ?」
「だって・・・。」
「だって?」
「これからどうなっちゃうんだろうって考えちゃって・・・。
もしかしたら、未来に強制送還かも!!」
「そんなワケ・・・。ねぇよ・・・。」
竜兎だってはっきりした事は分からない。
だからきっぱりと言い切る事が出来ずにいた。
「もしかしたら、あたしだけ未来に帰ることになるかも!」
「なんでだよ?璃麻だけなんて・・・。そんなことあるはずが無い。」
「ううん。
だってアタシが竜兎のトコロに行かなかったら決まりを破らずにいられたかもしれないじゃない・・・。」
「あのな・・・。」
「・・・アタシ、竜兎と離れるの・・・ヤダよ・・・。
ヤダ・・・。
そんなのって・・・辛すぎる・・・。」
璃麻は涙をぽろぽろと流した。
竜兎は思わず璃麻を抱きしめた。
「大丈夫だから・・・。
もし、そんなことがあったら俺も一緒に帰るから・・・。
俺は璃麻と一緒にいる。」
「りゅ・・う・・と・・・。」
「俺はさっき、璃麻が来てくれて嬉しかった。
規則を破ったとしても、俺は璃麻と一緒に居られて良かったと思ってる。」
璃麻は本当に嬉しそうな顔をし、竜兎を見つめた。
「・・・すきだよっ・・りゅうとっ・・・。本当にっ。」
「俺も・・・。」
幸せムードの二人を邪魔するかのように、どこからか視線が・・・。
じーっ。
視線が気になり、竜兎と璃麻は視線の元をたどった。
視線の先には、璃麻のクラスである1Bの生徒達がいた。
廊下の窓やドアから顔を出してこちらを見ている。
「・・・・・・。」
その場に居づらい雰囲気になり、竜兎は自分の教室に入って行った。
「・・璃麻・・・。またな。」
「ちょ・・・竜兎っ!」
璃麻の叫び声も虚しく、璃麻は一人取り残された。
と、そこに、ドアの辺りにいた来夏が、璃麻に歩み寄ってきた。
「あ〜ら、璃麻。お腹痛いんじゃなかった?」
「えっと・・・。」
「璃麻っ!」
「はいっ!!」
「どういうこと?璃麻ってば、A組の神童君と付き合ってたの?」
来夏の言葉を合図に、1Bの生徒達は一斉にゴクリと唾を飲み込み、璃麻の言葉を待った。
「うん。」
璃麻のあっけらかんと言う発言に、一同は明らかにがっくりとし、次々にそれぞれの席に戻っていった。
「?
どうしたの?皆、急に・・・。」
璃麻も自分の席に戻りつつ、来夏に聞いてみた。
すると来夏は璃麻の肩に手を乗せ、ため息を一つつくと言った。
「鈍感・・・。」
「はぁっ?」
「璃麻に彼氏が居たのが皆ショックだったんでしょ。。」
「何でよぉ?」
「・・・皆、璃麻が好きなんじゃないの?」
ガタッ。
璃麻は、自分の席に座ろうとしたが、来夏の言葉に動揺して、派手に転んでしまった。
「いっ・・痛っ・・・。ちょっと来夏っ!急に、な・・・なに言い出すのよ?」
「本当のことを言っただけだけどね。」
「何を根拠に・・・。」
「誰だって、見てればわかるよ。」
「・・・あのさ、ちょっと確認しておきたいんだけど、私のことを好きとは・・恋愛対象ってこと?」
「もちろん。」
璃麻は、自分で聞いておいて、顔を真っ赤にした。
(あたし、今まで、こんなに人に好かれたことって無いよ・・・。)
璃麻は、自分の机の上で顔を伏せて考え込んでしまった。
どうしよう・・・これからの学校生活・・・。
緊張する・・・。
「まぁ、そんなことは、どうでもいいよ。それより神童君のこと、詳しく聞かせてよー!!」
「え?竜兎のこと?」
「うんうん。その、リュウト君はどんな人なのよっ?」
「・・・・・・言わない。」
「どうしてよっ??」
「どうしてもっ。」
「別にそのリュウト君を取るわけじゃないんだからいいじゃない。
・・・でもまぁ・・・リュウトくんはカッコいいわよね。」
「でしょ!でもね、時々可愛いところもあるんだよ!」
そう言った後から、璃麻は、しまった、という顔をした。
「へぇ・・・。そうなんだ・・・。で?あとは?」
「もう言わないもん。」
「そうはいくか!吐け〜!!」
「言わない〜!!」
璃麻と来夏がそんなやり取りをしているのを知ってか、知らずか、その頃竜兎は、くしゃみをしていた。
「くしっ。」
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